屋上の鉄人
いい天気だった。
家の中でゴロンとしているのはもったいないと思い、
屋上に簾を茣蓙代わりに引く。
藺草の枕を置く。十分である。
ゴロンと仰向けになる。
高い雲と低い雲が違う速度で行き交う。
陽がまぶしいなと思って、
目を瞑ったら最後、
先ほど見ていた雲はいなくなる。
低い雲は、韋駄天のごときスピードで流れる。
高い雲は、ゆっくりと動きながら
その形を常に変えていく。
せわしないなあ。
と思ったら、
雲の方から
何を言ってやがる。
おまえらの方が、よっぽどせわしないじゃないか。
言ってくるような気がした。
自分は、あの雲ほどさえも
変わらずにいるのだろうか。
赤の女王もアリスに言ったはずだ。
流されることは簡単だ。
変わらないことは、本当に、本当に難しい。
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