鉄人28ミリ
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鉄人、EL TOPOは摩阿陀会



まあだだよ

黒澤明監督の「まあだだよ」を、
相方が帰ってくるまでの間、鑑賞してた。

摩阿陀会とは、内田百間の教え子たちが
毎年開いた、百間先生の誕生会。
還暦をすぎてもまだ冥途へ行かないので
「まあだかい」といいながらお祝いするのである。
詳しくは『まあだかい』を見られよ。
この本と、飼い猫が失踪して、泣きくれるわ、新聞に猫探しの広告を出すわという悲歎の日々を綴った『ノラや』を読んでおくと、
この映画をより一層楽しめるだろう。

ノラが行方不明になり、
泣きはらした百間先生。
寝床にしていた風呂桶の蓋においてある
ちっちゃな座布団をさわるたびに、ノラのことを思い出すシーンなどは涙を誘う。

考えてみたら、
いなくなっちゃった猫のことで文庫一冊分の原稿が書けるのだから
その思い入れたるや。いかばかりか。

そうか、それでは私も一つ小説など書いてみようか。
猫を書いた小説は『ノラや』の他にもたくさんあるわけで
単に「猫」と言ったならそれは250%「名前はまだない」やつなのであるからして、もう猫はいいだろう。
きっと猫の方で迷惑な顔をするのが、目に浮かぶようだ。
じゃあ
日の目を見ることの少ない、モグラにでもするか。

・・・
夏の短い期間、南方からきた神様が降り立った場所の近くに、
二ヶ月に一度、夜目の利くモグラたちが集う穴があるという。
新宿一丁目、ついこの間までは四谷區に属した地域だ。
その地下にある四方八方に巡らされた穴の内部では、音と光とが瞬き合い、
雌のモグラの舞を肴に、酒をくらった蠢きあうモグラたちが踊り明かすのである。
モグラの親玉は二匹あり、一方はその土地ゝゝに固有の音楽に造詣が深い音楽家で、
もう一方は陰影を操る影絵師だというのは人々の口から聞こえる噂なので定かではない。
ただその怪しさたるや誰の口からも異口同音に語られるところなのである。
その語る者にしてもモグラの様な面をしているのが何とも滑稽な話なのだが。
今週の末は、またモグラたちがざわざわと集まるらしい。

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